はじめに
自然界にある美しいもの、未知のもの、ふしぎなものを見たときに目を見はり、ときめきを感じる。そのような感性をセンス・オブ・ワンダーと称し、日々発見の喜びに胸を躍らせることの大切さを、かのr. カーソン女史が熱く説いている。それは、このような感性こそが自然をいとおしく思い、それを真に慈しむ心の発露に通じるからである。
それまで、「自然」というものをことさら意識することのなかった人が、ある日、森の中の草葉の上に一匹の虫を見つける。それは小さいけれど虹色に輝いていて、とても美しいものと感じる。いったいこれは何者? といぶかしみ、その名や素性を知りたいと思う。こんな素朴な疑問に少しでも心を動かされた人は、すでにセンス・オブ・ワンダーの居間に招じ入れられた客といってよい。
おもえば2008年の春、わたくしたちと同じように自然を愛してやまなかった同朋の原田富夫氏が他界された。かれはその数年前から愛用のカメラを携えて公園へ通い詰め、感動と喜びの目で動植物を撮り続けていた。それは多年生業に勤しんだ者に訪れる自適な明け暮れに加え、はからずも水辺公園の自然に接したことが大きなきっかけになったように思う。そして四季を通じ展開する生物の姿に魅了され、喜々とし、日々倦むことなく、センス・オブ・ワンダーの感性を育んでいたようである。
このたび、同氏が遺した膨大な写真画像を整理するとともに、広く友の会会員にも作品を募り、写真集としてこれを会員に頒布することを企画し、数年に亘る構想と技術的検討を経てようやくこれを実現するはこびとなった。
この写真集は、光の丘水辺公園に生息する昆虫類を仲間ごとに分け、検索の便宜に工夫を凝らしつつ、会員有志が手作りでまとめたものである。ここに収録した画像からは、いろいろな効用が考えられるが、なによりもセンス・オブ・ワンダーの感性を養う好個の素材になると思われる。くわえて、水辺公園に生息する昆虫の存在証明として、後世に伝えるべき資料としても高い価値をもつものである。
おりしも今年は、国際生物多様性年にあたっている。たくさんの生物が絶滅の危機にさらされ、多様性が失われている現実に即し、ようやく全世界の人々が保全の手を施そうとしている。この写真集が、光の丘水辺公園の昆虫相を語る際のカタログの役割を担うことにも期待を寄せたい。
2010年3月31日 坂本繁夫
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